有機質肥料WEB資料館

新有機質肥料講座(総論編)ページ54/57

スライド54:有機質肥料・まとめ

有機質肥料・まとめ

有機質肥料の畑土壌中での窒素無機化率は、60~70%程度のものが多く、高くて80%、低いものでは50%以下です。そのため、肥効率(利用率)は化学肥料には及ばないとする試験結果が多数存在します。反面、緩効性の窒素は作物生育の安定や品質向上に貢献します。有機質肥料の肥効は、施用後1~1.5ヶ月、長くても2ヶ月くらいだと考えられます。目に見える肥効はもう少し短いかもしれません。
有機質肥料施用土壌には、アミノ酸が生成されています。作物によって直接吸収され、生育相の改善等に役立つ場合もあるでしょう。作物の種類によっても効果は異なります。森らによる「植物の無機栄養批判」と題した一連の研究において、ある種の有機態窒素化合物が無機態窒素に比べて植物にとって良質の窒素源たることは明白である145)と述べつつ、『批判』とは『否定』ではないとも述べています146)。PEONのような高分子有機化合物を積極的に利用している植物もあります2)。土耕栽培でも有機態窒素が一定の役割を担っていることは否定できませんが、植物栄養の基本は無機栄養であることは変わりません。アミノ酸等の効果は限定的とみるべきで、有機質肥料とアミノ酸を直接結びつけ、過大な期待と評価を下すことは避けるべきではないでしょうか。
土壌微生物は、土壌中の物質循環の担い手であり、地力養分を支えています。特に根圏微生物は、作物との相互作用により、様々に生育を支えています。有機質肥料の微生物増殖能力は高く、物質循環の円滑化、根圏環境の改善などを通じて作物の生育を支えています。
有機質肥料は、単位量当たりの土壌団粒生成促進効果が高く、その効果は速効的です。施用量が多いほど効果は高く、連用によってより良い土壌になっていくと考えられます。低く安定した土壌水分は、植物細胞の呼吸活性を低下させ、糖含量を増加させます。糖含量が増加することで食味や貯蔵性を改善します。有機質肥料の施用効果における最も重要な効果と考えています。
菜種油かすやひまし油かす等には発芽や活着を抑制する物質が含まれています。有機質肥料は、尿素同等、あるいはそれ以上に亜硝酸ガスが発生することがあります。トンネルやハウス内での多量施用は危険です。また、種バエの発生にも注意しなければなりません。

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有機質肥料と有機質資材の関係 ・・・・・・・・・・ 1
有機質肥料の働きと効果 ・・・・・・・・・・ 2
第1章 土壌中での分解特性から見た有機質肥料の肥効と安全性 ・・・・・・・・・・ 3
第2章 植物による有機態窒素の直接吸収-無機態窒素だけでは説明出来ない植物の存在 ・・・・・・・・・・ 20
一部の植物が直接吸収するPEONの発見、アミノ酸や核酸は効くのか?・・・
第3章 有機質肥料と土壌環境-土壌団粒を中心に ・・・・・・・・・・ 33
第4章 有機質肥料と作物品質-作物品質向上メカニズム ・・・・・・・・・・ 42
有機質肥料・まとめ ・・・・・・・・・・ 54
巻末解説(古細菌) ・・・・・・・・・・ 55
参考文献・引用文献 ・・・・・・・・・・ 56
後書き ・・・・・・・・・・ 57

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