有機質肥料・まとめ
有機質肥料の畑土壌中での窒素無機化率は、60~70%程度のものが多く、高くて80%、低いものでは50%以下です。そのため、肥効率(利用率)は化学肥料には及ばないとする試験結果が多数存在します。反面、緩効性の窒素は作物生育の安定や品質向上に貢献します。有機質肥料の肥効は、施用後1~1.5ヶ月、長くても2ヶ月くらいだと考えられます。目に見える肥効はもう少し短いかもしれません。
有機質肥料施用土壌には、アミノ酸が生成されています。作物によって直接吸収され、生育相の改善等に役立つ場合もあるでしょう。作物の種類によっても効果は異なります。森らによる「植物の無機栄養批判」と題した一連の研究において、ある種の有機態窒素化合物が無機態窒素に比べて植物にとって良質の窒素源たることは明白である145)と述べつつ、『批判』とは『否定』ではないとも述べています146)。PEONのような高分子有機化合物を積極的に利用している植物もあります2)。土耕栽培でも有機態窒素が一定の役割を担っていることは否定できませんが、植物栄養の基本は無機栄養であることは変わりません。アミノ酸等の効果は限定的とみるべきで、有機質肥料とアミノ酸を直接結びつけ、過大な期待と評価を下すことは避けるべきではないでしょうか。
土壌微生物は、土壌中の物質循環の担い手であり、地力養分を支えています。特に根圏微生物は、作物との相互作用により、様々に生育を支えています。有機質肥料の微生物増殖能力は高く、物質循環の円滑化、根圏環境の改善などを通じて作物の生育を支えています。
有機質肥料は、単位量当たりの土壌団粒生成促進効果が高く、その効果は速効的です。施用量が多いほど効果は高く、連用によってより良い土壌になっていくと考えられます。低く安定した土壌水分は、植物細胞の呼吸活性を低下させ、糖含量を増加させます。糖含量が増加することで食味や貯蔵性を改善します。有機質肥料の施用効果における最も重要な効果と考えています。
菜種油かすやひまし油かす等には発芽や活着を抑制する物質が含まれています。有機質肥料は、尿素同等、あるいはそれ以上に亜硝酸ガスが発生することがあります。トンネルやハウス内での多量施用は危険です。また、種バエの発生にも注意しなければなりません。 |