4-3 作物品質と土壌管理
図45-1は矢野ら58)のデータを森50)が解釈し直しグラフ化したものです。ニンジン、トマトでは、窒素の多用は収量を増大するが、有機質肥料区は減収しています。一方、リン酸、カリ多用区、標準区は、いずれも同じ収量と全糖含量の水準にあります。これらのことは、窒素が最も収量と糖度に関係していること、糖含量の高いニンジン、トマトを多収することの難しさを示しています。浅野5) は、メロンの茎の窒素濃度と糖度に負の相関があること(図45-2)、栃木ら21)は、トマトの糖度と1株当たりの収量に高い負の相関があることを示しています。作物栽培における量と質の二律背反が示されています。森50)は、有機質肥料施用割合を変えて栽培されたメロンでは有機質肥料施用割合が高いほど還元型ビタミンCとβカロテンが多いこと、露地とハウスで見ると、露地の方がその差が顕著であることを示しています。
図45-3138)をみると、キャベツ、ダイコン、レタスでは、窒素含量と糖含量の間に明確な負の相関が認められますが、ナス、トマト、キュウリでは明確な関係性が認められません。この結果について、森50, 51)は、果菜類は果房ごとに収穫されるので、その時々の収穫前数日間の気象や土壌などの環境要因が大きく影響している。作物の種類や栽培条件によって必ずしも明確な関係性が認められない場合もあるが、窒素肥料の種類と量が作物の収量と糖含量(質)に大きく関わっていると述べています。有機質肥料のもつ緩効的な肥効は、作物品質向上に少なからず影響を及ぼしていると考えられます。 |