3-7 多収ダイズ畑土壌の物理性
秋田県大館市で、乾燥鶏糞200kg/10a(N8.0-P6.0-K3.4kg/10a)を連用し、25年間ダイズを連作しても300kg/10aを維持している農家事例を紹介します。ダイズの全国平均収量は150kg/10a程度で、栽培面積の93%は水田転換畑です135)。田畑輪換による地力低下と排水性不良が収量低下要因とされています136, 137)。乾燥鶏糞ペレットを肥料とし、25年間高い収量を維持している圃場と近隣の25年間化成肥料を連用している圃場の比較調査が行われました134)。図40-1には鶏糞連用圃場(以下鶏糞区)と化成肥料連用圃場(以下化成区)における団粒サイズ別分布割合を示しました。赤線で囲った、粒径1mm以上の大型団粒の割合が鶏糞区で高くなっています。また、鶏糞区では液相率と気相率が高まり、孔隙率の増加が認められました。図40-2に示したように化成区では天候により土壌水分が大きく変動していますが、鶏糞区では、降雨の有無による変動の幅が低く抑えられ、土壌水分状態が安定しています。異なる大きさの団粒が排水性と保水性の機能を高めたと考えられます。土壌pHも化成区や隣接水田より高く維持されていました。
化成区では3葉期から開花期にかけて葉色の低下が見られたのに対し、鶏糞区では葉色の低下は見られませんでした。隣接する水田土壌の全窒素含有率が0.25%に対し、鶏糞区0.37%、化成区0.17%でした。開花期以降の乾物重も鶏糞区で有意に増加しました。ダイズは短期間に大量の窒素を吸収、収量が高いほど根粒による固定窒素の寄与率が低下し、土壌から吸収された窒素に依存する割合が高く、増収の難しい作物とされています129)。図40-3のように鶏糞区において窒素固定活性、根の窒素吸収活性ともに高くなる傾向が認められました。有原129)は、根粒を活かす条件として根圏土壌の通気性と好適な土壌水分をあげています。鶏糞連用によって、地力窒素が維持されたこと、団粒構造の発達により土壌の排水性と保水性が高まったことにより、ダイズの生育、根粒活性の双方に好影響が得られたと考えられます。 |