3-5 有機質肥料と土壌団粒形成
図38-1では有機質肥料の施用によって大型団粒の生成が促進され、水はけの指標である透水性も改善されていることが分かります70)。土壌が団粒化することによって、土壌の排水性・通気性とともに水持ちも良くなります。団粒内部に保持された水は、重力や乾燥によって失われにくく、土壌水分状態が安定します。土壌水分が低く安定することは、作物品質(味)向上に極めて重要な要件となります50, 51)。土壌水分と品質について詳しいことは後述します。
米澤70)は、施用する量は多いほど団粒化が促進されること、表層や層状施用では効果が小さく、全層施用で効果を発揮すること(図39-2)を報告しています。ミクロ団粒(粒径0.25mm以下)の割合が低下し、粒径1mm以上の大型団粒の割合が顕著に増加することを示しました。また、菜種油かす施用による団粒形成は、施用後2週間後にピークとなり、その後漸減するが、施用後5週間後も大型団粒が高く維持されていました。全農の塩谷14)は、この試験と同じ効果を得るためには、菜種油かす400kg/10a程度必要だが、100kg以上でも、ある程度の効果は期待出来ると述べています。
図38-37)は有機質肥料と資材の団粒生成効果を比較したものです。菜種油かすなどの有機質肥料は速効的に団粒生成を助けますが、堆肥は施用後短時間では効果が見られませんでした。先のスライドでも解説したように、有機質肥料などの易分解性有機物の施用は、短期間にマクロ団粒の形成を促進する反面、易分解性有機物の供給が途絶えるとマクロ団粒の崩壊が始まります。一方堆肥など比較的難分解性の有機物は、マクロ団粒の形成効果は小さくなりますが、微生物への基質供給が維持され、団粒は長期安定すると考えられています。しかし、有機質肥料の継続的施用は、団粒構造の発達と維持効果が期待されます(スライド15、図15-1)。 |