3-2 有機質肥料と土壌微生物
誰しもが知っているように土壌中には無数の微生物が生息しています。作物生育に及ぼす土壌微生物の影響は多岐に渡っています。図35-1は有機物と土壌微生物の関係、土壌微生物の作物に対する作用をまとめたものです36)。
植物遺体や根分泌物、有機物などによって土壌微生物は支えられ、植物に様々な影響を及ぼしていることが分かります。土壌微生物は土壌中における物質循環の担い手として、植物に対する養分供給、環境などに大きく関与しています。作物生育の安定に欠かすことの出来ない団粒生成は、微生物の出す粘物質が“のり”の役目を果たし、大きな団粒(マクロ団粒)の生成にはカビの菌糸が粒子を絡める作用をしています3)。
土壌微生物の多様化は土壌病害の抑制に寄与します29)。特に、植物根圏には多数の微生物が生息しています。有機質肥料は、微生物の力で植物の栄養となることが出来ます。同時に有機質肥料は微生物の餌として土壌微生物の生存を支えています。有機質肥料を施すと、土壌微生物を増やすことは古くから研究されてきました。その中から一つだけ紹介します。図35-231)は土壌から発生する熱を計測することで有機質肥料・資材の土壌微生物増殖に及ぼす影響を調べた結果です。微生物数を原土の2倍に増やすために必要な肥料・資材の量を算出すると、鶏糞なら菜種油かすの7倍以上、堆肥なら30倍の量が必要であることが分かります。菜種油かすを約70kg施用することで、堆肥2トンと同じ微生物増殖効果が得られる計算になります。有機質肥料は、堆肥などに比べて非常に高い微生物増殖能力を有していると言えます。ただし、堆肥類に比べて土壌中で分解が速い有機質肥料は、微生物に対する基質供給が速効性である反面、堆肥類に比べて持続効果は弱いと考えられます。 |