第2章 植物による有機態窒素の直接吸収
以前からアミノ酸や核酸の施用効果について議論されてきました。有機質肥料の施用効果と言えば、アミノ酸云々と言っても過言ではないくらいの時代もありました。最近では以前のように声高に叫ばれることは少なくなりましが、今でも色々な機会に取り上げられることも多いと思われます。1960年頃から1980年代にかけてアミノ酸や核酸の有効性を示す報告14, 52, 53, 84, 85, 86)がいくつか発表されています。1990年代にはアミノ酸の吸収、利用性と施用効果について疑問視する報告が発表されてきました61, 76, 89)。その結果アミノ酸等の施用効果について疑問視する研究者が大勢を占めるようになりました。1990年代後半から2000年代に入ると別の視点から植物による有機態窒素吸収について研究されるようになってきました。例えば、アミノ酸の直接吸収と利用性に関し、注目すべきデータが示されています30, 54)。ツンドラ地帯に育つスゲは、アミノ酸を積極的に吸収、利用していることも報告されています144)。土壌中無機態窒素量では説明出来ない事例が多数存在する2, 43)ことから、特定の作物は土壌の有機態窒素を優先的に吸収していること、吸収する窒素化合物がPEON(Phosphate-buffer Extractable Organic Nitrogen)と呼ばれる蛋白様物質であること、その吸収機構等が、少しずつ分かってきました2)。
一旦決着しかけたかにみえたアミノ酸の施用効果ですが、植物による有機態窒素の直接吸収が明らかとなり、有機質肥料の施用効果を議論するに当たって、作物による有機態窒素の直接吸収を考慮すべきだと考えられるようになってきました。新たな時代の到来と言えるかもしれません。有機質肥料に由来するアミノ酸等の有機成分は作物に有効なのか? 簡単に結論の出せる問題ではありませんが、植物の有機態窒素吸収(の可能性)という側面から植物栄養について考えたいと思います。 |