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有機肥料講座
7. 有機質肥料の効果

目次
(1)有機質肥料と土壌微生物
(2)有機質肥料の作物品質改善効果
(3)有機物施用による農産物の品質向上メカニズム
(4)有機質肥料の土壌物理性改善効果
   
(1)有機質肥料と土壌微生物
 

 畑の土には多種多様な微生物がいます。時には作物に病気を起こさせる原因菌にもなりますが、ほとんどの微生物は畑の生態系の維持に不可欠な存在です。土壌中における物質循環の担い手であったり、作物養分の貯蔵源・供給源として非常に重要な働きをもっています(図7-1)。より多くの収量を得るために、人は肥料を施します。しかし、作物は生育に必要な養分の多くを地力に依存しています。畑作物が一生に必要とする窒素の半分近くを、また、水稲なら7割近くを地力に頼っています。地力とは何でしょうか?その土壌の持つ生産力の大きさを地力と言うのでしょうが、土壌微生物こそが養分的な意味での地力の本体です。さらに、人が施用した肥料も、多くが一旦微生物の体を経由して作物に吸収されることが分かっています。有機質肥料が分解され、作物の養分となることができるのも土の中で多種多様な微生物が働いているお陰です(図7-2)。筆者は、より多くの収量を期待するが故に、肥料で作ろうと思ってはいけないと考えています。「地力だけでは足らない養分を肥料で補ってやる」という考え方をすべきではないでしょうか。地力をつけるための土壌改良であり、施肥であるべきです。
土壌微生物は、人や動物、作物に病気を起こすものもあります。しかし、土壌には病原菌を押さえ込む働きをもった微生物もいます。また、出来るだけ多くの種類の微生物が出来るだけたくさん生息している方が作物の土壌病害が発生しにくいことも分かっています(図7-3)。まさに、植物は土壌微生物なしには健全な生育が出来ないと言っても過言ではありません。
土壌を良くするために堆肥を施用します。堆肥は、土壌微生物に住処と餌を提供します。しかし、単位量当たりの土壌の微生物を増やす働きは、堆肥よりも有機質肥料の方が格段に高いことも分かっています(図7-4・表7-1)。
作物の生育にとって不可欠の地力をつけるために、有機肥料は大きな力を発揮します。だからと言って、堆肥等の有機物の施用を否定するものではありません。ただし、堆肥にも養分が含まれています(図7-5~7)。
堆肥類の養分を無視したこれまでの施肥法は改めるべきです。堆肥類と有機肥料を上手に組み合わせて、過剰施肥にならないように努めることが、地力を維持しながら高い生産性を保つ方法だと考えられています。

■関連データー 
図7-8~10 肥料と野菜の品質7_img01.gif図7-3 微生物多様性と病害7_img02.gif図7-4・表7-1 有機質肥料の土壌微生物増殖能力7_img03.gif図7-5~7 堆肥の肥料養分7_img04.gif
 
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(2)有機質肥料の作物品質改善効果
 

 生産者の多くが有機質肥料に最も期待する効果は、農作物の品質が良くなるということでしょう。有機質肥料と収穫物の品質との関係は、これまでいろいろな機関で研究されました。必ずしも関係ないとする研究成果もありますが、多くの試験で、味や栄養成分等の品質向上(図7-8~10図7-11)や、保存性の向上(図7-12)などが報告されています。ただし、化学肥料に比べると収量は少なくなるという結果が多く、品質と収量とは相反する性質のようです(図7-13)。しかし、有機肥料を上手に使うと化学肥料と同等以上の収量が得られ、品質も良くなる場合があります(図7-9)。
有機質肥料を上手に使い、窒素の過剰吸収を押さえ、低い土壌水分で管理すると、作物体中の糖含量の上昇と蛋白質含量の減少が起こります(図7-14、7-15)。このことが、栄養成分(ビタミンCなど)の増加や保存性の向上につながります(図7-16、7-17)。窒素施肥量と灌水を増やせばある程度増収が可能になりますが、品質の低下を招き、さらには保存性の低下をきたすことにもなります。
確かに有機質肥料は化学肥料に比べて環境に優しく、味や品質も良くなります。しかし、品質には水分管理やその他の栽培管理が非常に重要であることも事実です。有機質肥料さえやっておけば、一流の農作物が作れると思ってはいけません。また、有機質肥料は化学肥料より環境に与える負荷は小さいと考えられますが、適正施肥を守らなければ化学肥料同様に大きな負荷を環境に与えることになります。有機質肥料の性質を正しく理解して使うことが大切だと考えられます。

■関連データー 
図7-8~10 肥料と野菜の品質
7_img05.gif図7-11 肥料の種類とトマト果実の硬さ、そしゃく性7_img06.gif
図7-12 有機栽培と無機栽培野菜の貯蔵性7_img07.gif
図7-13 施肥法と野菜の収量7_img08.gif
図7-14~17 蛋白質、糖含量と品質、保存性との関係
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(3)有機物施用による農産物の品質向上メカニズム
 

 森は食品の質向上メカニズムを土壌水分の低下窒素の緩効的な肥効で説明しています。有機物を施用し、土壌の団粒化が促進(本ページの4項参照)され、土壌水分が低く安定した状態となると、作物体は水分欠乏の状態におかれます。作物は、吸水のために自ら低水分状態で生きていく機構を発達させます。低水分状態の細胞は、ミトコンドリア(呼吸を行う細胞内器官)の活性低下により呼吸の低下を招きます。次に、呼吸活性の低下によってデンプンの分解が促進され、細胞内の可溶性糖含量が増加します。さらに、低水分ストレスによる蛋白合成阻害と窒素の緩効的肥効によって体内蛋白含量(窒素含量)が低下します。作物体内の蛋白質含量の低下は、食品の保存性を向上させるとともに体内糖含量の増加を促します。作物体内の糖含量が増加すると、味が良くなるとともに、ビタミンCやカロテンなどの栄養成分の合成が促進されることは先ほど述べた通りです。
灌水を極限まで控えることによって、フルーツトマトに代表される甘く美味しい作物が作られることは広く知られているところです。低水分によって細胞内液が濃縮され甘くなる(糖含有率が高くなる)と言う人がいますが、それもありますが、実際は「細胞の呼吸活性の低下によるデンプン分解を伴う可溶性糖含量の上昇」が正しい考え方です。

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(4)有機質肥料の土壌物理性改良効果
   土壌の物理性は、水はけの良否、土壌中空気の組成などに大きな影響を及ぼします。根の活力や化学性にも影響を与えています。そのために、堆肥をはじめとする土壌改良資材が施用されますが、有機質肥料も土壌物理性の改良効果が意外と高いことが分かっています(図7-19・20)。 ■関連データー
図7-19・20 有機肥料の土壌物理性改良効果7_img11.gif
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