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有機肥料講座
5. 有機質肥料のアミノ酸と核酸
目次

(1)有機質肥料のアミノ酸
(2)有機質肥料の核酸 

 

有機質肥料のアミノ酸
 

 有機肥料に含まれる窒素化合物の大半は蛋白質です。蛋白質は約20種類のアミノ酸で構成される化合物です。有機肥料の種類によって含まれるアミノ酸は異なっています(図5-1)。さらに、有機肥料を土壌に施用すると、相当量の遊離のアミノ酸が生成されることも確かめられています(図5-2)。
図5-3のトマトの事例は、微量のアミノ酸のを添加によって生育が促進された例です。裸麦の例は、アミノ酸を唯一の窒素源として増収した例です。これら以外にも、プロリンなどのアミノ酸を追肥すると着果促進などの効果も報告されています。
図5-3によれば、トマトと裸麦で効果のあるアミノ酸は異なっています。詳細は分かりませんが、作物の種類の違いのほか、生育ステージが異なった時期に効果を判定したためと考えられます。水稲、果菜類、果樹で生育ステージや季節による植物体中のアミノ酸が調べられています。水稲や果菜では、栄養生長から生殖生長への転換期にプロリンが増加するなど、生育時期や季節によってアミノ酸組成が変化することが知られています。
多くの事例では、アミノ酸混合物を与えた場合より単一のアミノ酸を与えた場合にその効果が劣るとした結果が多いようです。これは、植物の窒素代謝に関係していると考えられます。右の図5-4に示したようにアンモニアから最初にグルタミン酸が作られ、グルタミン酸からアスパラギン酸とアラニンが作られます。その後、この3種類のアミノ酸から種々のアミノ酸が作られます。
グルタミン酸を出発点としたアミノ酸合成に比べ反応速度が遅く、体内の窒素代謝を狂わせるからだと考えられています。植物体内のアミノ酸代謝の出発点であるグルタミン酸や次のアスパラギン酸では、トマト、裸麦ともに効果のあることは注目出来るでしょう。
作物がアミノ酸をある程度吸収利用し、無機窒素とは異なった作用があると考えて差し支えないと思われます。アミノ酸の作用機作は必ずしも解明されておりませんが、無機窒素とは異なった作用があることは事実だと思われます。有機肥料の、無機肥料にない効果の一部はアミノ酸が寄与しているものと考えられます。しかし、最近になって植物の種類によって有機物を利用する能力に違いのあることも報告されています。

■関連データー
図5-1 有機質肥料のアミノ酸
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図5-2 有機質肥料施用土壌中の遊離アミノ酸濃度
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図5-3 アミノ酸類の作物生育に与える影響
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図5-4 植物の窒素同化(高橋)
根から吸収された硝酸はアンモニアに還元され、アンモニアからグルタミン酸が作られる。次にグルタミン酸からアスパラギン酸とアラニンが作られる。これら3種類のアミノ酸から種々のアミノ酸が合成される。

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有機質肥料の核酸
   核酸とは、生物に共通の遺伝を司る化学物質ですが、大きく分けて二種類の核酸があり、それぞれ別の役割をもっています。最近は誰もが名前ぐらいは知っているDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の二種類です。DNAもRNAも核酸塩基と呼ばれる4種類の化合物と、糖およびリン酸がらせん鎖状に長くつながった化合物です。4種類の核酸塩基の配列で遺伝情報が伝えられていきます。DNAに含まれる核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類ですが、RNAはチミンのかわりにウラシルを含みます。
前置きが少々長くなりましたが、農業上応用されている核酸はRNAと核酸塩基では特にウラシルです。核酸はすべての生物が共通にもっている化学物質ですが、微量の核酸類を外から植物に与えると生育促進などの効果があることは古くから報告されていました。図5-5は、水耕栽培のトマトにRNAやその他の核酸関連物質を根から与えた事例です。高い生育促進効果のあることが分かりますが、この場合は、125ppmの無機窒素を含む培養液に、窒素で2ppmに相当する量の核酸類を添加した事例です。従って、窒素吸収量が増加したための効果とは考えられません。核酸が直接植物に何らかの影響を与えたと考えるの妥当なように思われます。
核酸の施用効果については、東大の森氏(1986)が非常に興味ある結果(図5-6・図5-7)を報告されています。土耕裸麦に唯一の窒素源としてRNA(RNA中のリン酸は上乗せ)を与え、高い増収効果を見ました。さらに、土壌中でのRNAの分解を考慮し、RNAを構成する部品であるアデノシン(アデニン+糖の化合物)、グアノシン(グアニン+糖の化合物)、シチジン(シトシン+糖の化合物)、ウリジン(ウラシル+糖の化合物)を土に加えて栽培したところRNAの効果には及びませんでした。RNAまたはRNAが個々の部品レベルまでバラバラになる前の化合物に効果があるようです。

■関連データー
図5-5 核酸類の生育促進効果5_img05.gif


図5-6・7 リボ核酸(RNA)のもつ高い施用効果
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