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有機肥料講座
3. 有機質肥料の種類

 有機質肥料には、様々な植物や動物に由来するもの、発酵工業や食品工業から副産されるものなど非常に多くの種類があります。狭い意味での有機質肥料とは、農水省の定める普通肥料の公定規格に記載されたものですが、家畜糞なども植物に養分を供給する能力からみれば有機質肥料と言えます。改訂有機JASの規定に従えば、自然に産するものなら無機物でも有機質肥料の範疇に含められています。

 この章では、肥料公定規格に定められた普通肥料(一部特殊肥料を含む)から、一般に流通している「有機の肥料」について、肥料成分や性質について解説します。

 肥料公定規格では、普通肥料として認められたすべての肥料を、窒素質肥料をはじめとしたいくつかのグループに分けています。そのグループの一つに有機質肥料があり、動植物質に限るとされています。例えば、腐植酸系肥料は、窒素質肥料や苦土肥料などに分類され、有機質肥料の中には入っていません。この章で取り上げた肥料は、公定規格上の有機質肥料に捕らわれず、「一般に言うところの有機質の肥料」を取り上げました。また、改訂有機JASでは有機と認められている熔りんや天然塩化加里などは省きました。

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目次
植物油かす類(菜種・大豆・綿実・米ぬか等の油かす)
魚粉類(魚粕)
骨粉質類(蒸製骨粉・魚骨粉)
甲殻類質肥料粉末(カニ殻)
蚕蛹かす粉末類(蛹かす・蛹油かす)
し尿汚泥肥料
腐植酸系肥料(腐植酸アンモニア・腐植酸リン肥 等)
グアノ(窒素質グアノ・リン酸グアノ・バットグアノ)
その他の有機肥料
(混合有機質肥料・副産動物質肥料・副産植物質肥料・
副産複合肥料・魚廃物加工肥料・汚泥肥料)
植物かす粉末類(えんじゅかす・乾燥おから 等)
動物かす粉末類(フェザーミール・蹄角・皮粉・毛粉 等)
蒸製魚鱗
乾燥菌体肥料(菌体肥料・乾燥酵母)
加工家きん糞(発酵鶏糞 等)
パーム椰子灰
とうもろこし浸出液肥料(CSL)
海藻粉末
PAGETOP
植物油かす類

 菜種、大豆、綿実、ゴマ、落花生などの植物の種子や米ぬか等から油を搾ったかすを一括して植物油かす類と呼びます。
その中で菜種油粕は有機質肥料の代表選手。肥料成分の効き方も有機質肥料全体の中間。大豆油粕は有機質肥料の中では最も速く肥効が現れます。菜種油粕や綿実油粕など多くは、窒素・リン酸・カリを概ね5~6%、2%、1%程度含み、大豆油粕はそれぞれ7%、1%、2%程度を含みます。
菜種油粕は、作物の生育パターンによく合っており、古くから利用されています。また、土壌の物理性を改善したり、土壌微生物を増やす働きが大きいなど優れた有機質肥料です。しかし、土壌中で分解した窒素の硝酸化成が極端に遅い、施用直後は発芽を強く抑制するという欠点(図3-15・16)があり、注意しなければなりません。
大豆油粕は、肥効が速く、土壌の物理性改善効果も高く、地力の維持増進によいとされています。
■関連データー
図3-1 植物油粕類の肥効
図3-15・16 有機質肥料の発芽阻害作用

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
※特殊肥料
PAGETOP
植物かす粉末類
 植物かす粉末類に分類される有機質肥料には、えんじゅかす、乾燥豆腐かす(乾燥おから)、たばこ屑肥料、甘草かすなどがありますが、いずれも流通量は比較的少なく、複合肥料の原料に使われることは少ないようです。
えんじゅかすは、最近公定規格に定められた新しい有機質肥料です。主に、中国で生産されており、初夏に黄白色の花を咲かせる中国原産でマメ科落葉高木の「エンジュ」という木の主に蕾から医薬品を作ったかすです。概ね窒素、リン酸、カリを3、1、2%程度を含んでいます。えんじゅかすは、特に初期の窒素の無機化が極端に遅く、速効性の肥料と組み合わせることで、緩効的な肥効を得ることができます。
豆腐を作った後に出る「おから」は、全国で膨大な量が排出されています。しかし、そのままでは水分が多く、腐敗しやすいために一部でぼかし肥や豚のえさなどに使われているのみです。おからを乾燥させたものは、豆腐かす乾燥肥料と言われ、普通肥料として公定規格に所載されていますが、流通量は少ないようです。肥効は遅効的です。
たばこ屑肥料は、たばこの製造中に出る葉柄、中脈(中肋)、葉の微粉を粉末にしたものです。流通量はそんなに多くはありません。
■関連データー
図3-17・18 えんじゅ粕の分解特性
図3-28 乾燥豆腐かす肥料の窒素無機化特性

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
魚粉類
 生魚(イワシ、ニシン、雑魚など)を水で20~30分煮て、圧搾機で油と水分を除き、乾燥させたものを一般に魚かすと呼んでいます。有機質肥料には大きく分けて植物由来のものと動物由来のものがありますが、動物系有機質肥料の代表。普通肥料の公定規格では、魚かす粉末、干魚肥料粉末、魚節煮かすの3種類があります。魚かす粉末は、4%以上の窒素と3%以上のリン酸を含み、窒素とリン酸の合量が12%以上であること、と規定されています。干魚肥料粉末は、窒素6%以上、リン酸3%以上。魚節煮かすは、窒素9%以上と規定されています。
一般的な魚かすは、窒素とリン酸をそれぞれ7~10%、4~9%含みます。温度によって分解速度があまり変わらず、比較的速効性の肥料で、元肥・追肥ともに使えます。寒冷地や重粘土、砂土などでも肥効が高く、肥料の流亡も少ない優れた肥料です。魚粕は、作物の味を良くすると言われ、特に果樹農家では重用されています。しかし、一度に大量に施すと土壌中にアンモニアが貯まり、かえって品質を悪くする場合があります。
■関連データー
図3-2・表3-2 魚粕窒素の肥効

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
動物かす粉末類
 様々な動物由来有機質肥料の内、蒸製蹄角・蒸製皮革粉・蒸製毛粉などを動物粕類と呼びます。蛋白含量が高く、高窒素の肥料が多く、有機質肥料の主な窒素源として使われています。
蒸製毛粉は、羊毛屑や鳥の羽を加圧蒸製(3気圧・180度・3時間以上)し、乾燥させたものです。このうち、鶏などの羽から作ったものは、フェザーミールと呼ばれ、窒素を12%程度含みます。蒸製蹄角粉や蒸製皮革粉と同類の蛋白質ですが、畑地での肥効はやや速いのですが、水田での分解は遅く、長期間無機化が持続します(図3-11・12)。フェザーミール主体の複合肥料を使って、水稲の一発型に近い肥料も販売されています。
動物の角やひづめを高温の蒸気(3気圧・180度・3時間以上)で蒸して柔らかくしたものを粉砕したのが蒸製蹄角粉です。窒素を12%以上含みますが、その肥効は遅効的です。価格は高価です。BSE発生後、海外からの輸入が禁止され、僅かな国内品が流通しているのみになっています。
なめし革などの屑を蒸熱(3気圧・180度・3時間以上)後乾燥、粉砕したものが蒸製皮革粉です。肥料成分や肥効は蒸製蹄角粉と変わりません。以前は海外から安価に輸入されていましたが、BSE発生後は僅かに国内品が流通しているだけで、価格も以前より高くなってきました。蒸製皮革粉は、以前は安価であったために、概して評価の低い有機質肥料でしたが、線虫を軽減する効果などもあり、蹄角同様に優れた有機質肥料です。非常に残念なことですが、海外からの輸入が禁止された蒸製蹄角粉や蒸製皮革粉は、今では珍しい有機質肥料となってしまいました。有機肥料の主な窒素源は、フェザーミールとなっているのが現状です。一般にフェザーミールと呼ばれている鶏などの羽を蒸製したものと、蒸製毛粉(羊毛加工屑を蒸製したもの)、鯨のひげを蒸製したもの(窒素10~14%を含み、流通品は皆無)は、肥料公定規格では、いずれも蒸製毛粉に含まれています。
以前は、乾血という牛や豚などの動物の血液を乾燥させた、高窒素で速効性の有機肥料がありましたが、現在は、BSEのために全面的に流通が禁止されています。

 狂牛病予防に必要な国際規格で製造されています。安心して使ってください。ただし、これらの原料を使った肥料は、放牧地への散布や動物の餌に混入する恐れのある使い方は禁止されています。

■関連データー
図3-3 動物粕類の無機化特性
図3-4 皮粉の線虫防除効果
図3-11・12フェザーミールの無機化特性

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
※肥料公定規格には所載されていますが、現在はBSEにより使用禁止措置が取られています
PAGETOP
骨粉質類
 一般に骨粉と言われているのは、牛、豚などの動物の骨を砕いて加圧・高温(3気圧・180度・3時間以上)で蒸製し、脂肪と大部分のにかわ(ゼラチン)を除いた蒸製骨粉のことです。その他、ゼラチンを除いた脱膠骨粉(だっこうこっぷん)もあります。蒸製骨粉は、窒素4%程度、リン酸18~22%含み、肥効は緩効的で残効も長く、優れたリン酸肥料の一つです。脱膠骨粉は、リン酸分を30%以上含み、窒素は1~2%しか含みません。公定規格上は、脱膠骨粉も蒸製骨粉に含められています。最近は、原料が牛から豚主体になったため、以前に比べ、りん酸成分は低くなっています。蒸製していない生骨粉(きこっぷん)は、現在では流通が禁止されています。また、普通肥料の公定規格では、蒸製鶏骨粉が定められていますが、牛や豚の蒸製骨粉より、肥料成分含有率は低くなっています。
BSE発生後は、骨粉質類の海外からの輸入が禁止され、僅かに国内産の豚や鶏の骨粉が流通しているのみになっています。国内の牛骨粉もありますが、脊柱を除いたり、死亡牛は使用できないなどの規制が厳しく、流通量が少なく、価格も高価です。骨粉の代替え品として、植物またはリン鉱石由来のリンカルの流通量が増加しています。海外からは、動物(豚が多い)の骨を高温で処理した骨炭や骨灰(いずれも特殊肥料)も輸入されていますが、蒸製骨粉に比べて施用効果は劣るようです。
流通量は少ないのですが、鮫などの大型魚の骨を蒸製した蒸製魚骨粉も輸入されています。鮪などの国産魚骨粉も僅かですが流通しています。一般に蒸製魚骨粉の窒素は、家畜由来の骨粉より少ないのですが、りん酸成分を25~28%程度含んでいます。通常の蒸製骨粉の代替え品として、非常に魅力的な有機肥料ですが、流通量が少ないのが残念です。
骨粉質類には、もう一つ肉骨粉があります。窒素を6~8%、リン酸を8~15%含み、窒素の分解に従ってリン酸が溶けやすくなり、リン酸の吸収、利用性が高い優れた有機肥料ですが、BSEの感染源だとみなされ、一旦は完全に流通が禁止されました。国内品については非常に厳しい制限の元、僅かに生産されているようですが、非常に高価で、流通量も僅かなため、複合肥料の原料としてはほとんど使われていないと思います。
いずれの種類の骨粉も流通量が少なく、以前に比べてかなり高価になっております。日本の有機農業発展のために、骨粉に変わる有機リン酸源の確保が急がれます。

 弊社の骨粉類は、狂牛病予防に必要な国際規格で製造された国産品を使っています。安心して使ってください。ただし、これらの原料を使った肥料は、放牧地への散布や動物の餌に混入する恐れのある使い方は禁止されています。

■関連データー
図20・21 骨粉類の無機化特性
表3-5 リン酸肥料の肥効

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
※肥料公定規格には所載されていますが、現在はBSEにより使用禁止措置が取られています
PAGETOP
蒸製魚鱗
   魚の鱗(うろこ)を高温の蒸気で蒸してから、乾燥、粉砕したものです。窒素、リン酸をそれぞれ6、18%以上含みます。古くからある肥料ですが、以前の流通量は多くはありませんでした。最近は、BSEによって蒸製骨粉の流通量が極端に少なくなったために、徐々に輸入量が増加しているようです。多量のリン酸と共に含まれる窒素は、蒸製骨粉や菜種油粕と同等の肥効を示します。
肥料の保証票に記載される場合、統合表示では魚粉類に含められます。

■関連データー
図3-26 魚鱗の窒素無機化特性

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
甲殻類質肥料粉末
 かにやえびの殻を粉砕したものを、肥料公定規格では甲殻類質肥料粉末と呼びますが、カニ殻の方が一般的です。カニ殻は、窒素とリン酸をそれぞれ4%程度含みます。窒素の肥効(図3-22)は、米ぬかと同じぐらいで、かなり緩効的(4週間で50%くらいの無機化率)です。
カニ殻やエビ殻は、キチンを主成分としています。キチンを土壌に施用すると、土壌中にキチン分解菌が増殖し、キチンを分解する酵素(キチナーゼ)の活性が高くなっていきます(図3-23)。多くの糸状菌は、細胞壁にキチンを含むため、土壌中に増殖したキチン分解菌によってフザリウム病などのカビによって起こる病気の軽減に効果があります。しかし、1回の施用で十分な効果を上げるためには、10a当たり1トン程度の施用を必要とするようです(図3-24)。成分からみた1回の施肥限度量は、800kg/10a程度と考えられ、他の肥料もいっしょに施すなら、もっと少ない量しか施用できないことになります。従って、連用を前提し、放線菌類(キチン分解能をもつ)が増殖しやすい環境を作ってやると共に、総合防除の一環としてカニ殻施用を考える必要があると思われます。図3-25では、キャベツの萎黄病に対して、数年間カニ殻を連用すれば、ある程度の防除効果が認められています。また、図3-23にあるように、カニ殻施用後、播種や定植までに2週間程度の期間をとる必要があります。

■関連データー
図3-22 カニ殻の無機化特性
図3-23 キチン分解活性とインゲン根腐病抑制効果
図3-24 カニ殻のダイコン萎黄病抑制効果
図3-25 カニ殻のキャベツ萎黄病抑制効果

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
乾燥菌体肥料
 活性汚泥法による水処理で発生した微生物菌体を乾燥したもの、医薬品工業で細菌の一種から脂質を除いた菌体、培養酵母から核酸などを除いたものなどを一括して乾燥菌体肥料と呼びます。非常に多くの種類があって一概には言えませんが、一部を除いて一般に遅効性です(図3-19)。
乾燥菌体肥料の中で培養酵母を乾燥したものがあります。これは、有効なアミノ酸などを多量に含み、微量で生育促進などの優れた効果を発揮します(表3-8)。

■関連データー
図3-19 菌体肥料の無機化特性
表3-8 微量の酵母が大きな効果

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
蚕蛹かす粉末類
 今ではめっきり珍しくなりましたが、戦前の養蚕の盛んな頃には肥料として珍重され、広く利用されていました。そのころより、さなぎ粕は非常に有効な肥料として位置づけられていました。弊社では、有機質肥料の宝庫、中国の工場では、さなぎ粕をはじめ有機質肥料をふんだんに使った配合肥料、ペレット肥料を生産し、大変好評を頂いております。
さなぎ粕には、生育促進効果の高い"コリン"を含んでいます。アミノ酸、特にトリプトファンが多く含まれ、トリプトファンは生長ホルモンの前駆体として知られております。油分が多く、窒素の肥効はゆっくりです。
さなぎ粕には弊社でも使っている絹糸を取った後の蛹をそのまま乾燥させたものと、絹糸を取った蛹から油を取り除いたもの(少量のリン酸を含む)の2種類があります。

■関連データー
表3-10 さなぎ粕の施用効果

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
加工家きん糞肥料
 鶏糞は、牛糞や豚糞に比べて多くの肥料養分を含み、その肥効も高く、堆肥類と言うよりは肥料的な性格の強い有機質資材と言えます。適正に堆肥化されたものは、生育阻害やハウスでのガス害もなく、肥料効果の他に土壌改良効果も期待できます。稲の元肥で10a当たり40~60kg、野菜・果樹では10a当たり100~200kg程度を施用する。
肥料の公定規格では、鶏やウズラなどの糞に硫酸等を混合して火力乾燥したもの、糞を加圧蒸煮した後乾燥させたもの、糞を熱風乾燥・粉砕を同時に行ったもの、糞を発酵乾燥させたものを加工家きん糞肥料と呼んでいます。おがくず鶏糞などは、普通肥料の加工家きん糞肥料にはあたりません。農家向けに市販されているものは、鶏糞を発酵・乾燥したものが多く、加工家きん糞として普通肥料登録を取ったものより、特殊肥料などで売られているものが多いようです。
加工家きん糞肥料の保証成分は、概ね窒素2.5~4.5%、リン酸2.5~4%、加里1.5~3%程度です。ウズラ糞を原料としたものでは、窒素成分が高く5~6%を保証しています。
窒素は、大半が有機態で一部はアンモニア態になっています。比較的早くから無機化され、作物に吸収されますが、遅くまで肥切れしません。施用された窒素の概ね60~65%が1年間に有効化し、その多くは施用後1ケ月程度で無機化すると考えられます。硫酸処理等を行った発酵鶏糞の窒素有効化率は、もう少し高いと考えられます。ただし、おがくず鶏糞堆肥の場合は、1年間の有効化率は30%程度と考えられます。表3-22・図3-34に示した有効化率は、単年施用の結果であり、毎年連用すると、窒素の放出量は増加しますが、10a当たり数100kg~1トン程度の施用なら、連用による有機物蓄積効果は、あまり考慮しなくても良いとされています。
リン酸や加里の利用率も高く、よく効きます。保証成分以外にも、石灰、苦土、微量要素などを含み、腐植酸含量も比較的高いようです。

■関連データー
表3-22・図3-34 鶏糞堆肥の土壌中での分解

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
し尿汚泥肥料
 

 古くから最も身近な肥料として利用されていたのが"人糞尿"ではないでしょうか。しかし、最近では衛生上の問題や化学肥料の発達によって自家利用されることはほとんどなくなりました。しかし、適正に処理された人糞には優れた効果が期待できます。また、肥料公定規格が改訂され、最新の衛生的な工場で発酵・乾燥処理されたものが安価に提供されています。
土壌改良効果も高く、適正に利用すれば優れた有機肥料となります。窒素の無機化は地力窒素に近く、ゆっくりと長く効きます。しかし、畑地での硝酸化成は早く、特に秋冬作野菜では、初期生育がよく高い収量が得られる、根の生育を促進するなどの効果が得られます。しかし、無機化速度が遅く、単体で使うと化成肥料より収量が低下する場合があります。適当な肥料と組み合わせて使うことが大切です。

■関連データー
図3-5・6 し尿汚泥肥料の肥効特性
和歌山市で製造されているし尿汚泥肥料(商品名 AZ有機)の詳しい資料

PAGETOP
パーム椰子灰
 椰子油の原料となるパーム椰子の外側の殻を焼いた灰。やや濃い灰色の粉末。30%以上の加里成分と若干のリン酸成分と苦土成分等を含む。古くから民間で使われている草木灰と同様ですが、加里成分含有率が高い。主にインドネシアなどから輸入されている。肥料の公定規格では、副産複合肥料に含まれるので、原料表示も副産複合肥料となります。
有機農産物を定めた改訂JASでは、天然の塩化加里や硫酸加里または硫酸加里苦土の使用は認められていますが、工業的に生産される肥料の原料となりうるカリ肥料では唯一の有機物由来の肥料です。ただし、pHが高く、アルカリ性なのでアンモニア成分を含む肥料等、その混合に制約があります。
PAGETOP
腐植酸系肥料
 炭化の進んでいない亜炭を硝酸または硝酸と硫酸で分解し、アンモニアで中和したものが、腐植酸アンモニアです。アンモニアの代わりにカリや苦土を結合させたものは、腐植酸加里肥料、腐植酸苦土肥料と呼ばれます。石灰を作用させた腐植酸石灰(改良資材、普通肥料にはなっていない)もあります。肥料成分の他に腐植酸(フミン酸)を60~70%含んでいます。
亜炭を硝酸で分解して腐植酸を作り、熔りん、重過石リン酸スラリー(リン鉱石にリン酸または硫酸を加えた分解液)などを作用させて、顆粒状にしたものは、腐植酸リン肥と呼ばれます。一般にく溶性リン酸を15~30%、く溶性の苦土を4~8%含みます。腐植酸を35%程度含み、腐植でリン酸を包んだような形になっています。可溶性の石灰やケイ酸を含むものもあります。
腐植酸とは、堆肥や土壌腐植のエッセンスのようなもので、様々な効果が期待されます。キレート作用により土壌中のリン酸固定をやわらげ、リン酸の利用を促進します。また、土壌のCECを高めて保肥力を高めます。腐植酸の施用は、作物の養分吸収を高めたり、生育を促進する効果も期待されます。
通常10a当たり50~60kg程度が施用されますが、効果を高めるためには局所施用によって根圏に集中的に施用することが望ましいと思われます。稲の苗代に1平方メートル当たり45g程度の腐植酸石灰を施すと、根張りが良く健苗が得られると言われています。また、雪国では、雪上散布し、融雪と土壌改良効果を兼ねた使い方もされています。また、10a当たり10kgの腐植酸加里を袋に入れ、水田の水口に、板で直接水圧がかからないよう置いて、徐々に溶出させると太陽熱を吸収して水温を上げる効果があります。その他腐植酸加里は水稲に対する効果が高く、根の活力を高め、湿田、イモチやゴマハガレ発生田、冷害などに効果があります。

■関連データー
図3-13・14、表3-15腐植酸の効果

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
とうもろこし浸出液肥料(CSL)
   トウモロコシからデンプンを作る過程で、まずトウモロコシを温亜硫酸水に浸漬し、乳酸発酵を行い、デンプン以外の蛋白質などを除きます。その過程で排出される液をCSLと呼びます。CSLは、茶色の粘性の高い液体ですが、液色は、元のトウモロコシの色によって、やや色の濃いものから薄いものまで様々です。色によって効果が変わることはありません。
CSLは、微生物工業では、以前から微生物の栄養源の一つとして利用されてきました。また、CSLを植物かすなどに吸着させ、飼料としても利用されてきました。50%程度の水分を含み、肥料成分としては、あまり多くを含みませんが、近年の研究の結果様々な有用成分を含み、植物の生育に良い影響を与えることが分かり、最近、肥料公定規格に所載されました。肥料としての肥効は、液体ですから速効性ですが、窒素の分解には数日かかります(図3-29)。
CSLは、単体でも植物を良好に育て、特に根に良い影響を与えます。主に、液肥類の原料として使われますが、単肥で販売されているものもあります。

■関連データー
図3-29・30 CSL施用土壌の無機窒素濃度と細菌数
図3-31~33 CSLを用いた養液土耕トマトの根

※黄色の数字は最低含有量が保証されている成分
PAGETOP
グ ア ノ
 

 海鳥やコウモリの糞が長い年月堆積されてできたもので、「窒素質グアノ」、「リン酸グアノ」、「バットグアノ」の3種類があります。このうち、窒素質グアノだけが肥料公定規格で普通肥料として取り扱われています。リン酸グアノとバットグアノは、共に特殊肥料としての扱いになっています。
1960年頃から70年代初頭に行われた調査によってペルー産グアノにジャガイモシストセンチュウのシストが含まれていることが確認されました。シスト内卵も生きていることが確認され、日本での最初の感染源として強く疑われています。ジャガイモシストセンチュウは、ジャガイモ栽培の大敵とされヨーロッパでは厳重な防疫体制がとられています。ジャガイモシストセンチュウは、ジャガイモ以外にもトマトやナスなどにも感染することが知られています。すべてのペルー産グアノにセンチュウのシストが含まれている訳ではないようですが・・・。

●窒素質グアノ
窒素質グアノは、ペルーグアノに代表される古くから利用されてきた肥料ですが、1988年以降はほとんど輸入されていません。アフリカ産などがごく僅かに輸入されているだけで、良質の窒素質グアノは入手困難になっています。一般に窒素を13~16%、リン酸を8~11%、加里を1.5~2.5%含みます。窒素の形態はその多くが速効性の尿酸態です。アンモニア性窒素も1~4%含まれます。
窒素の形態別分析の一例をあげると、窒素全量14.49%のうち、アンモニア性窒素4.81%、尿酸性窒素7.71%、残り2%程度は未消化排泄物や羽毛などに由来する窒素でした。アンモニア性窒素は、未消化排泄物が堆積中に分解し、生成したもので、リン酸塩、シュウ酸塩、尿酸塩などの形態をしている。
窒素質グアノの主要窒素形態である尿酸は、アラントイン→アラントイン酸→尿素を経てアンモニアに変化しますが、尿酸、アラントインや尿素も直接吸収され、ポット試験では塩安より効率よく利用されることが分かっています(図3-35・36)。しかし、窒素質グアノを用いた試験では、水田では硫安にほぼ等しく、畑地では硫安よりやや劣る結果になっています。

●リン酸グアノ
リン酸グアノは、主に東南アジアなどの雨の多い島から産出されます。窒素質グアノに比べて遙かに古い時代のグアノで、雨水などで窒素成分や有機物は、その多くが失われ、糞のリン酸成分等が珊瑚礁の石灰と結合したものです。堆積した年代によって、比較的新しく、多少有機物を残したものをリン酸グアノと呼びます。一方堆積年代が古く、窒素や有機物がほとんど失われ、岩石化したものは、グアノリン鉱石と言います。アパタイト化が進んだものは、リン酸の可溶化率が低く、リン酸の肥効が良くありません。リン酸の肥効は、可溶化率が高いものなら肥料として使えるようです。インドネシア産のリン酸グアノを用いて、JA全農肥料研究室が行ったリン酸の肥効試験では、熔りんと同等または若干低い、という結果でした。リン酸成分の高い数少ない有機肥料の一つですが、不溶性のリン酸が多く、購入に当たっては、リン酸全量より、リン酸の可溶化率の高いものを選ぶようにする。中には、く溶性リン酸または可溶性リン酸をほとんど含まないものがあるので注意しなければならなりません。概ね、リン酸全量の1/2またはそれ以上が、く溶性リン酸になっているものを選ぶようにすると良いと考えられます。

●バットグアノ
バットグアノは、コウモリの糞を主体に、それに群がる昆虫類の遺骸やコウモリの遺骸などが混ざったものです。肥料的価値は窒素質グアノには及びません。フィリピンやインドネシアなどから輸入され、採取場所によって品質は様々です。窒素0.5~8%、リン酸5~30%を含むものが市販されているようです。非常に古いデータが多く、最近では公的機関等から公表されたデータはほとんどありませんが、表3-25に成分分析例を示しました。。購入に当たっては、窒素やカリ成分が高く、可溶性リン酸の高いものを選ぶようにすると良いでしょう。バットグアノについて、様々な効果が取りざたされていますが、科学的な検証は、ほとんどなされていないのが現状です。

■関連データー
表3-22 窒素質グアノの成分分析例
図3-35・36 塩安または尿酸を唯一の窒素源としたイネおよびトウモロコシの養分吸収量
表3-23 リン酸グアノの成分分析例
表3-25 バットグアノの成分分析例

 
PAGETOP
海 藻 粉 末
   ヨーロッパでは非常に古くから使われ、海藻の採取権を巡って戦争が起きたこともあります。日本でもかなり以前から輸入され、一部で利用されてきました。肥料成分含有率は、比較的低く、窒素の無機化が遅く、普通肥料とはなっていません。しかし、特殊肥料に指定されており、登録の化成肥料(粒状肥料)や配合肥料の原料として使用することが認められています。微量要素は豊富に含まれています。
海藻粉末の効果については、必ずしも科学的に解明されてはいませんが、生育の促進など、種々の効果があるとされ、海藻粉末や海藻エキスが一種のブームになっています。

■関連データー
図3-27 海藻粉末の無機化特性
PAGETOP
その他の有機質肥料
  ● 混合有機質肥料
1.有機質肥料を2種類以上混合した肥料。有機質肥料に米ぬか、発酵米ぬか、乾燥藻(海藻粉末)もしくはヨモギかすを混合したもの。
2.1の混合有機質肥料の原料となる肥料に血液または豆腐かす(おから)を混合し乾燥させたもの。
普通肥料の公定規格では、上記のように規定されています。数種の有機肥料が混ざり合った肥料であり、通常の有機配合肥料のようなものだと考えて差し支えありません。従って、肥料によってその内容は区々ですが、通常、改訂有機JASの有機肥料と考えて差し支えありません。単肥のような形で販売される場合と、複合肥料の原料として使われる場合があります。

● 副産動物質肥料
食品、繊維、ゼラチン、皮革工業において、生産ラインの中で副産物として発生し、動物質の原料に由来するものを副産動物質肥料と言います。様々な生産ラインから発生する肥料ですから、その性質や肥料成分は千差万別です。有機質肥料であっても、改訂JASに定めるところの有機質肥料に当たるかどうかは、個々に確認しなければなりません。
普通肥料の公定規格では、窒素全量だけを保証するものは、窒素全量が6.0%以上含むこと。あるいは、窒素全量以外にリン酸全量または加里全量を保証するものは、窒素全量+リン酸全量(または加里全量)の合計量が10.0%以上であって、窒素全量については2.0%以上、リン酸全量については2.0%以上、加里全量については9.0%以上含むこととなっています。

● 副産植物質肥料
食品または発酵工業において、生産ラインの中で副産物として発生し、植物質の原料に由来するものを副産 植物質肥料と言います。様々な生産ラインから発生する肥料ですから、その性質や肥料成分は千差万別です。有機質肥料であっても、改訂JASに定めるところの有機質肥料に当たるかどうかは、個々に確認しなければなりません。
普通肥料の公定規格では、窒素全量だけを保証するものは、窒素全量が3.5%以上含むこと。あるいは、窒素全量以外にアンモニア性窒素、リン酸全量または加里全量を保証するものは、窒素全量+リン酸全量(または加里全量)の合計量が5.0%以上であって、窒素全量については1.0%以上、アンモニア性窒素については1.0%以上、リン酸全量については1.0%以上、加里全量については1.0%以上含むこととなっています。

● 副産複合肥料
食品または化学工業において、生産ラインの中で副産物として発生し、窒素、リン酸、カリのいずれか2成分以上を含有するものを副産複合肥料と言います。様々な生産ラインから発生する肥料ですから、その性質や肥料成分は千差万別で、有機肥料の場合と、そうでない場合があります。副産動物質肥料と副産植物質肥料の場合は、公定規格でも動物あるいは植物に由来するものと規定されていますが、副産複合肥料は、窒素・リン酸・加里の全量、アンモニア性窒素、く溶性や水溶性のリン酸、加里などを保証することができます。上記パーム椰子灰も公定規格上は副産複合肥料になっています。

● 魚廃物加工肥料
魚やイカの内蔵などの廃棄物を泥炭などの動植物質に吸着させた肥料。普通肥料の公定規格では、窒素全量4.0%以上とリン酸全量1.0%以上と規定されています。窒素、リン酸、加里を保証する場合は、それぞれ、4.0%以上、1.0%以上、1.0%以上と規定されています。

● 汚泥肥料
以前は特殊肥料であった下水汚泥などが現在では普通肥料として登録できるようになっています。この中には、「下水汚泥肥料」、「し尿汚泥肥料」、「工業汚泥肥料」、「混合汚泥肥料」、「焼成汚泥肥料」、「汚泥発酵肥料」、「水産副産物発酵肥料」の7種類が定められています。なお、公定規格の汚泥肥料等の項目には、有機肥料ではありませんが、「硫黄およびその化合物」も含まれています。これらの肥料について、公定規格では、肥料成分の含有量についての規定はなく、有害成分等に関する非常に細かい規定と植物に対する害作用のないことが規定されています。詳しくは、肥料取締法及び関係検索システムを参照して下さい。
 

表3-24 汚泥肥料の種類

種   類  
下水汚泥肥料

下水道の終末処理場から発生する汚泥を処理したもの。下水汚泥肥料に動植物質の原料を混合したもの。

し尿汚泥肥料

し尿処理場から発生する汚泥を処理したもの。し尿汚泥肥料に悪臭防止材または動植物質の原料を混合したもの。上記、し尿汚泥肥料の項参照。

工業汚泥肥料

工場または事業場の排水処理施設から出る汚泥を処理したもの。工業汚泥肥料に動植物質の原料を混合したもの。

混合汚泥肥料

下水汚泥肥料、し尿汚泥肥料、工業汚泥肥料のいずれか二つ以上を混合したもの。混合汚泥肥料に動植物質の原料を混合したもの。

焼成汚泥肥料 下水汚泥肥料、し尿汚泥肥料、工業汚泥肥料、混合汚泥肥料を焼いたもの。
汚泥発酵肥料

下水汚泥肥料、し尿汚泥肥料、工業汚泥肥料、混合汚泥肥料を堆積または撹拌して発酵熟成させたもの。汚泥発酵肥料に動植物質の原料または、焼成汚泥肥料を混合し、堆積または撹拌して発酵熟成させたもの。

水産副産物発酵肥料 魚介類の臓器に動植物質の原料を混合し、堆積または撹拌して発酵熟成させたもの。
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